「本態性振戦」という、手や頭にふるえが現れる病気があります。
ふるえはいろいろな原因で起こります。気温の変化( 寒さ)や精神的緊張など、だれにでも起こり得る自然なふるえもあれば、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)・脳卒中アルコール依存症・ーキンソン病などの病気の症状として起きている場合もあります。ふるえはこれら以外に、ぜん息薬などの薬を飲んでいる人で、その副作用として起こるものもあります。
「本態性振戦」とは、特に問題となる原因がなく、生理的なふるえが起こるような状況でもないのにもかかわらず、手や頭にふるえが生ずる病気です。手指や頭、声のふるえによる日常生活の支障や、精神的な苦痛などです。そしてこれらのふるえは、じっとしているときよりも、なにかをしようとするときや、ある特定の姿勢をとったときに現れるのが特徴です。
本態性振戦の症状は何年たっても発症したときのままほとんど変わりません。この病気で麻痺することはありません。
私たちが一定の力で筋肉を働かせているとき、筋肉の細胞一つ一つは収縮と伸展を素早く繰り返し、細かくふるえています。しかし、膨大な数の細胞がまちまちの早さでふるえているため、筋肉全体としてはふるえていないように見えますし、ふるえを自覚することもありません。ところが、交感神経が過剰に興奮すると、収縮と伸展のリズムがそろってくるために振動の幅が大きくなります。その結果、ふるえが自覚されるようになります。
精神的な緊張・ストレスが強いと交感神経がたかぶり、症状が強くなりがちです。十分な休養をとり肉体的にも精神的にもリラックスすると、症状が改善することもあります。
人と会うときに、ふるえを気付かれないように隠そうとすると、余計ひどくふるえることがあります。そんなときはむしろご自分から「ふるえが出やすい体質なのです」と言ってしまうのもよい方法です。
そのことで緊張がとれて症状が軽くなり、落ち着いて話しができます。
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